日本植物病理学会報
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イネいもち病菌の胞子形成に及ぼす光の影響
大森 薫中島 三夫
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1970 年 36 巻 5 号 p. 319-324

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抄録

1. 暗黒条件下で,27°C, 7日間イネいもち病菌H67-1を各種培地に培養し胞子形成を調べたところ,イネわら煎汁加用V-8ジュース培地,イネわら煎汁培地,見里培地,V-8ジュース培地で比較的多く,オートミール培地,ジャガイモ寒天培地では少なかった。
2. 白色螢光灯を照射すると上記のすべての培地で暗黒条件に比し多量の胞子を形成した。胞子形成の絶対量はイネわら煎汁加用V-8ジュース培地,イネわら煎汁培地,V-8ジュース培地などがきわめて多く,増加程度はジャガイモ寒天培地,オートミール培地でいちじるしかった。
3. イネわら煎汁加用V-8ジュース培地にイネいもち病菌H67-1,研60-19,研53-33の3菌株を培養し,異なった種類の光源で照射すると,ブラックライトブルー螢光灯照射区の胞子形成はいちじるしく増加したが,純赤色螢光灯,純黄色螢光灯,純緑色螢光灯,純青色螢光灯照射区では暗黒区にくらべ胞子形成量の増減はほとんど認められなかった。
4. 各種のガラスフィルターを用い異なった波長の光線を照射した場合,340mμならびに365mμに透過光線のピークを有するフィルター使用区で上記の3菌株ともに胞子形成量が増加したが,それぞれ380, 401, 422, 432, 450mμに透過光線のピークを有する各区では変化は認められなかった。以上のことからイネいもち病菌は,350mμ付近の近紫外線照射により胞子形成が促進されるものと考える。

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