抄録
CMV-OあるいはCMV-Yに感染したタバコ葉搾汁液をタバコ苗の根部に接種すると,水耕および鉢植えタバコのいずれも全身的に地上部に病徴を現わす率はCMV-Yでは5-20%, CMV-Oでは25-100%であった。この全身感染率は葉部接種にくらべて低く,また地上部へのウイルスの移行は早くて7-10日,多くは30-40日を要した。CMV-OはCMV-Yにくらべて発病率は高い傾向を示したが,季節の影響およびウイルス系統の差異が考えられる。根部接種根部および葉部接種根部のCMV-Oの濃度推移をササゲの病斑数によって測定した結果,いずれも接種後10日前後に高くなり,以後急激に低下し,再び上昇するパターンが得られ,葉部とほぼ同様なパターンを示すことが確かめられた。植木鉢に2本植えとしたタバコの一方を葉接種によって感染させた実験および木枠に植えた幼苗を用いた実験,また畑のタバコにおける調査からCMV罹病株に隣接する外観健全タバコの根から50%以上の頻度でCMVが検出され,罹病株の根から健全株の根部への伝染がかなりの頻度でおきていることが明らかとなった。従来CMVのようなin vitroの耐性の弱いウイルスでは接触伝染は無視しうるものと考えられていたが,これらの実験結果から,根部伝染は比較的容易におこり,畑における発病の原因となりうる可能性があるものと考えられる。