1. アズキでは種子伝染するウイルスとしてアズキ・モザイク・ウイルス(AzMV),種子伝染しないウイルスとしてキュウリ・モザイク・ウイルス(CMV),ササゲ・モザイク・ウイルスの2系統(CAMV-1, CAMV-3)を用い,ササゲでは種子伝染するウイルスとしてCAMV-1, CAMV-3,種子伝染しないウイルスとしてサブクローバ・モットル・ウイルス(SMV)を用い,胚感染と種子伝染との関係を調べた。
2. 生育初期にウイルスに感染したササゲおよびアズキでは種子伝染するvirus-hostの組合せの場合にだけ未熟胚からウイルスが検出された。また未熟胚からウイルスが検出される場合に,未熟胚中のウイルス濃度が高い胚と低い胚とがあることが示された。そして未熟胚中に高濃度のウイルスが検出される率はそのvirus-hostの組合せにおける種子伝染率に近かった。
3. 未熟種子から未熟胚だけを取り出し,殺菌土壌に播き,発芽,生育してくる幼植物について発病の有無を調べたところ,種子伝染するvirus-hostの組合せでだけ,それぞれの種子伝染率に近い発病率が認められた。またウイルスが高濃度に含まれていることが示された未熟胚から生じた幼植物においてだけ発病が認められた。
4. 開花期のササゲとアズキにCAMV-1とCAMV-3を接種し,未熟胚からウイルスの検出を試みたところ,種子伝染するCAMV-1-ササゲ,CAMV-3-ササゲの組合せでだけ低濃度のウイルスが検出された。このことから種子伝染するvirus-hostの組合せで,未熟胚に含まれるウイルスが低濃度の場合には,そのウイルスは胚の発育中に親植物体から直接感染したものであると考えられた。
5. 健全なアズキおよびササゲの未熟胚,完熟胚に各種ウイルスを接種したところ,供試したすべてのvirus-hostの組合せで胚のウイルス感染が認められたが,とくに未熟胚の場合,感染率はかならずしも高くなかった。またウイルスに感染したアズキ,ササゲから未熟胚をとり,これに汁液接種した場合も同様の結果が得られた。また,植物体に着生したままの未熟胚にウイルスを汁液接種し,その後植物体上で完熟させたところ,きわめて低率にしかウイルス感染はおこらなかった。
6. これらの結果から,発育中の未熟胚が親植物体から直接にウイルス感染を受けない,または受けにくいのは,未熟胚がウイルス感染に抵抗性であること,親植物体からウイルスの移行が困難であること,の二つの理由にもとづくものと推定した。
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