日本植物病理学会報
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イネ紋枯病菌菌核の生理・生態に関する研究
I.菌核の水中浮沈について
羽柴 輝良山口 富夫茂木 静夫
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1972 年 38 巻 5 号 p. 414-425

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抄録

イネ紋枯病菌(Pellicularia sasakii (Shirai) S. Ito.)菌核の水中における沈下および浮上の機作について,菌核の形態,生理面から検討した。
稲体上に形成した菌核は褐変,成熟後に落下し水中に沈下するが,菌核形成開始1ヵ月以内には浮上する。一方培養菌核(PDA培地)は水中でほとんど浮上することはない。
含水量ならびに比重を測定した結果,培養菌核は含水量が低下しても浮上しない。また空気比較式比重計による浮上菌核の比重は水より重い。この結果から菌核の内部形態が浮沈に関与していることが推定された。
浮上自然菌核の横断面組織形態は内層,外層の2層よりなり,内層は生細胞のmass,外層は空胞化細胞のmassである。空胞化細胞層の幅は200μ以上で菌核半径の約1/2を占めている。それにくらべてまだ浮上できない沈下自然菌核の外層の幅は狭く約150μ以下であり,外層の外側に菌糸層(菌糸状細胞の層)を残している。時間とともに空胞化細胞層(すなわち外層)の増加,外側の菌糸層の消滅がおこり浮上できる菌核に変る経過をたどる。培養菌核の組織形態は外層,内層の2層よりなるが,外層の幅が小さい上に多数の菌糸状細胞が混在し,空胞化細胞の形成がきわめて劣る。
以上のことから,菌核の水中浮沈に関与する要因は内部組織の形態変化,とくに外層を形成する空胞化細胞の形成,菌糸状細胞の消長に関係すると推定された。

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