日本植物病理学会報
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モモアカアブラムシにおけるジャガイモ葉巻病ウイルスの潜伏期間とその保有
菅原 政芳小島 誠村山 大記
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1974 年 40 巻 1 号 p. 39-45

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抄録

ジャガイモ葉巻病罹病植物(Physalis floridana Rydb.)上で3時間獲得吸汁させた(以後吸汁虫と呼ぶ)モモアカアブラムシ(Myzus persicae Sulz.)は吸汁後9時間目にはじめて本ウイルスを伝搬し,また4日間病植物を吸汁させたアブラムシの磨砕液(原液)および体液を注射した(以後注射虫と呼ぶ)虫の場合でも,注射後6時間目にはじめて本ウイルスを伝搬し,それぞれ吸汁虫および注射虫とも数時間の虫体内潜伏期間が存在することが認められた。保毒虫の磨砕液を注射する場合,高濃度のウイル液を注射した虫ほど虫体内潜伏期間が短かくなり,またその伝搬率が高くなった。
罹病植物上で3時間以上吸汁させたアブラムシでは,本ウイルスを検出することができたが,1時間吸汁させた虫では検出されなかった。なお実験を行なった24時間内の獲得吸汁では,吸汁時間が増すにつれて虫体内のウイルス濃度は上昇する傾向が認められた。吸汁虫および注射虫いずれもその伝搬率は24時間内ではウイルス獲得後の時間の経過にともない上昇する傾向にあったが,本ウイルスを獲得吸汁(3時間)させた虫および注射虫体内におけるウイルス量およびウイルス検出率は時間の経過にともない減少しており,潜伏期間内におけるウイルス量の増加は認められなかった。
以上のことから,本ウイルスのアブラムシ体内における潜伏期間はアブラムシ体内でウイルスが増殖する期間ではなく虫体内を循環したウイルスが植物に達するまでに要する期間と考えられる。

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