キュウリべと病と寄主の光合成の関係を明らかにするため,キュウリ葉に
14CO
2を与えて同化させ,罹病葉における
14C-光合成産物の挙動,および
14C-光合成産物の分生胞子へのとりこみを調べた。
1. 接種前に
14CO
2で同化処理すると,接種後病斑が形成されても,
14C-光合成産物は病斑に全く集積しなかった。
2. 接種2日後,病斑がまだ現われない罹病葉を
14CO
2で同化処理すると,
14C-光合成産物は,接種6日後,8日後,14日後のそれぞれの病斑部にいずれも斑点状に集積した。
3. 接種8日後,典型的な病斑を形成した罹病葉を
14CO
2で同化処理すると,同化直後は病斑部の
14C量は健全部に比し少ないが,7時間後になると健全部より多くなり,
14C-光合成産物の病斑部への集積が認められた。病斑部に集積した
14C-光合成産物の量は,その後わずかに減少するが同化20時間後はほとんど減少しなかった。一方,罹病葉の健全部の
14C量は同化20時間後までは著しく減少し,対照の健全葉よりも減少した。
4. 接種7日後,罹病葉の罹病部(病斑と一部の健全部を含む)を黒紙で遮光し,同葉の健全部だけを
14CO
2で同化処理すると,
14C-光合成産物は同化開始1時間後にすでに病斑部に転流・集積した。
5. 接種後病斑の現われた罹病葉を
14CO
2で同化処理し胞子形成させると胞子に多量の
14C-光合成産物が検出された。胞子中の
14C量は,同化当日に胞子形成させたときに最も多く,同化1日後,2日後,および3日後になると経時的に減少した。一方,接種前日に
14CO
2で同化処理し,接種7日後に胞子形成させると,胞子にとりこまれた
14C量は著しく少なかった。
以上の結果から,罹病葉で同化生成された
14C-光合成産物は,短時間の間に病斑部に転流し,病斑中の菌糸に急速にとりこまれ,さらに胞子中に移行し,胞子形成に直接関与していることを明らかにした。
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