日本植物病理学会報
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インゲン感染組織の枯死,分解の間におけるRhizoctonia solani Kühnの行動
宇井 格生本間 善久
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1974 年 40 巻 5 号 p. 392-400

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抄録

インゲン幼苗にR. solaniを接種し,1ヵ月後に地上部を切り取ると,地下部組織は徐々に衰弱,枯死し次第に分解する。この間胚軸,主根上部の病斑を培地上におき菌の分離をすると,接種菌が分離される病斑の割合は次第に低下し,112日後には分離されなくなる。これに反し各種糸状菌の分離されるものが著しく増加する。R. solaniの分離されなくなった病斑の残骸と,そのほかの地下部組織の残渣を取り出し,インゲン胚軸に接種すると,典型的なR. solaniによる病斑が現われる。すなわち,病斑組織に侵入した各種糸状菌は,病原菌の分離に際し培地上で拮抗を示すが,寄主組織中の病原菌は長期間生存する。
用いた菌株はインゲン胚軸皮層部に境界の明らかな大型病斑をつくるが,菌糸は維管束,内皮には侵入しない。病斑内部には菌核状菌糸塊が形成され,それらはインゲン組織の崩壊後も病斑部の変色した細胞壁残骸にかこまれ長期間土壌中に残存する。地下部の衰弱に伴い,病斑内の菌は隣接細胞内にのび出し,根面に生存した菌糸とともに皮層細胞内に小さい菌核状菌糸塊をつくる。また,菌糸は内皮を通り中心柱に入り,維管束細胞内部にも侵入し,厚膜細胞内部はmonilioid cellで充たされる。地下部柔組織はぢきに崩壊するが,厚膜の維管束細胞は分解し難く残渣状となり長期間残存し,内部のmonilioid cellはそのままの状態で生存を続ける。
根面や病斑組織内部に存在するR. solani以外の糸状菌も,インゲンの衰弱に伴ってその組織内に侵入し,一部は維管束細胞内にも侵入するが,R. solaniよりもおくれる。

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