日本植物病理学会報
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窒素多施イネの細胞壁物質生成といもち病抵抗力
松山 宣明
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1975 年 41 巻 1 号 p. 56-61

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抄録

窒素肥料を多施したイネはいもち病に対し著しく罹病性となる。特に葉脈と直角方向への病斑の進展が促進される。窒素肥料として硫酸アンモニウムを追加施用したイネにおける細胞壁物質含量の変動を調べた。その結果,全炭水化物量,hemicellulose, lignin含量の明らかな減少が観察された。特に窒素肥料を追施後出葉した葉においては,処理後8日目において既に減少が認められた。α-cellulose含量は僅かながら減少するが,pectin含量には変化が認められない。イネ体中の全窒素含量が一定濃度に達した場合,窒素施用量をふやしても全窒素量は変化せず,以後のhemicellulose含量にも殆んど変化が認められなかった。hemicellulose分画は主としてxyloseから成り,arabinose, glucoseが僅かながら検出された。以上の結果に基づき窒素多施によるイネ細胞壁物質含量の減少と機械的抵抗力の低下,いもち病抵抗力の低下について論議を加えた。

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