日本植物病理学会報
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腐敗病細菌のペクチン質分解酵素(endo-PTE)による細胞壁多糖質の可溶性化
解離多糖質の性質
大内 昭富永 時任
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1975 年 41 巻 2 号 p. 162-170

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抄録

腐敗病細菌のendo-PTEを細胞壁成分(粗繊維)に作用させると,多量の水溶性多糖質が溶離する28)。本報ではこの多糖質の性質を調べて,該酵素による組織の崩壊機構を検討した。
ダイコン根部より調製した粗繊維に,2.0PTE単位の純化酵素を作用させたのち,種々の多糖質分画に分別した。まず,各分画の収量を測定したところ,酵素処理区ではF-I分画(水-可溶性多糖質)の著しい増加にともなって,おもにF-III分画(希塩酸-可溶性糖質)が減少することが判明した。
F-IおよびF-III分画は化学的性質の異なる多成分の混合体であって,いずれもDEAE-セルロースヵラムクロマト法によって6画分に分けられた。F-I糖質の主成分は,酢酸緩衝液の濃度が0.2, 0.3および0.4Mで溶離する3画分であって,その収量はいずれも酵素処理区で高まっていた。一方,F-III糖質の主成分のうち,0.3および0.4M画分と水酸化ナトリウムで溶離する画分が酵素処理で著しく減少していた。それゆえ,酵素処理区で認められたF-I糖質の増加とF-III糖質の減少は,両糖質における主要画分の増減に起因すると判断され,この際とくにウロナイド成分の変動が顕著であった。
酵素処理区のF-I糖質は構成単糖を異にした多成分の混合物と理解され,各画分を硫酸で加水分解した結果,ガラクトウロン酸のほかにガラクトース,アラビノース,ラムノースおよびキシロースなどの中性単糖が検出された。
F-I糖質の解離機構についてはさらに検討を要するが,ウロナイド成分に富む0.2および0.3M画分では,不飽和化合物の含量が多く,エステル化度も高かったので,これらはエステル化度が比較的高いプロトペクチン質から,trans-eliminative26)に解離したと推考した。

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