山形県内で,カスガマイシンのイネいもち病防除効果減退現象の見られる3圃場,および同現象の見られない3圃場の罹病葉または穂から,総計207株のいもち病菌を分離し,同剤感受性を寒天平板拡散法により検定した。
阻止円直径によって示される感受性の分布から,同剤感受性菌と耐性菌は明確に区別され,それらの中間の感受性を持つ菌は見られなかった。耐性菌は同剤効果減退の見られる3圃場のみから見いだされ,その3圃場のいずれにおいても感受性菌が必らず混在していた。しかし,同一罹病部から耐性菌と感受性菌とが見いだされることはなかった。
分離された耐性菌株群と感受性菌株群について,寒天培地上での菌叢生育,オートミール培地上での胞子形成数,胞子懸濁液の噴霧接種によるイネ葉上病斑の数および長さを比較したが,いずれの調査項目においても有意差を認めなかった。
一方,イネいもち病菌保存株の胞子多数をカスガマイシン含有寒天平板に接種し,同剤耐性株が出現する瀕度を観察した結果,薬剤濃度100ないし500μg/ml間でその頻度は変らなかったが,供試菌株の種類により,またその培養条件により頻度は変化した。10年以上保存培養した菌株をさらに単胞子培養すると,耐性菌出現頻度が減少することが観察され,薬剤の存在しない保存期間中の菌の変異,すなわち自然変異による耐性菌生成の可能性が指摘された。