土壌殺菌剤,ハイメキサゾール(3-hydroxy-5-methyisoxazol)の微生物による選択吸収について,in vitro及びin vivoでの薬剤感受性の異なる微生物を用い比較検討した。感受性菌
Pellicularia sasakii及び
Fusarium oxysporum f.
cucumerinumは,標識本薬剤を急速にとりこみ,菌体全体に分布する。吸収は,能動的と受動的吸収によって行なわれる。本実験の条件として,吸収作用と使用菌体量及び使用薬剤濃度との関係を検討した結果,生菌重量5g/使用薬剤量0.06μci (0.08μg/ml)/緩衝液量50ml/振盪培養5hrの条件で,経時的に吸収量の測定を行うことによって,菌種間の本薬剤の吸収作用を適正に比較しうることが判明した。
感受性菌,
P. sasakii, Rhizoctonia solani(培養型2, 1A及び1B)
F. roseum及び
F. oxysporum f.
cucumerinumは,溶液中より本薬剤を多量吸収するが,非感受性菌,
Saccharomyces cerevisiae及び
Pseudomonas cruciviaeは,吸収が少ない。同一種属内のin vivoでの感受性の低い菌,
F. monlliforme及び
R. solani(培養型3A及び3B)は,同種属の感受性菌よりも吸収が少なかった。
薬剤吸収後,緩衝液で菌体を洗滌した場合,菌体にとりこまれた本薬剤は,非感受性菌では流失し易いが,感受性菌では菌体成分に結合し,流失が少ない。結合した薬剤は,菌体構成々分中のTCA (trichloroacetic acid)及びメタノール不溶性成分の分画中に,感受性菌では多量に検出されたが,非感受性菌では少量にすぎなかった。これらの結果から,ハイメキサゾールの選択毒性の発現の機序として,微生物間の薬剤吸収能の差異が主要な要因と考えられる。かつ,TCA及びメタノール不溶性の菌体成分々画中への薬剤の結合の程度が,ハイメキサゾールの殺菌作用発現の機序を示唆しているものと考えられる。
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