日本植物病理学会報
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ランえそ斑紋ウイルス(Orchid Fleck Virus: OFV)の形状と細胞内所見
張 茂雄荒井 啓土居 養二与良 清
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1976 年 42 巻 2 号 p. 156-157

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抄録

ランえそ斑紋ウイルス(OFV;新称)がAngulorea, Cymbidium, Dendrobium, Odontoglossum, Oncidium, Pescatoreaなど各種のランから見出された。OFVはいずれのランでも全身的えそ斑紋病徴を現わし,30C以上の高温時に汁液接種すると,タバコ,Nicotiana glutinosa, Chenopodium amaranticolorなどに局所壊死斑を生じた。OFV粒子はOsO4固定を追加した改変DN法で病斑組織から検出できた。また,病葉磨砕汁液をTriton X-100処理したのち分画遠心して部分純化された。部分純化試料は多量のOFV粒子を含み,Dendrobiumなどに高い感染性を示した。OFV粒子は被膜のない短桿形で,ネガティブ染色試料では約40×150nm,ピッチ約4.5nmのらせんcapsid構造を示したが,切片試料では32-35×100-140nmとやや小さく測定された。OFVの細胞内所見を切片像で調べたところ,まず核内にviroplasmができ,それが次第に発達しその周囲と内部にOFV粒子が産生集積し,次いで核内に充満した粒子が核膜に続く膜系のルートで細胞質に移行することが多数の電顕像から推察された。この細胞内所見と一致する膜に囲まれた粒子集団の像や一端が膜に吸着された粒子の像などはDN法によるネガティブ染色試料でも認められた。なお,感染細胞は最終的には壊死し,崩壊した膜系に包まれたOFV粒子集団が細胞内の随所に認められた。以上の結果から,OFVは被膜をもつrhabdovirusグループには属さない新しいグループのウイルスと考えられる。また、電顕所見よりみて、Dendrobiumのleaf spot virus (Petzold, 1971), Phalaenopsisのleaf spot virus (Lesemann and Begtrup, 1971),コーヒーのringspot virus (Kitajima and Costa, 1972),ならびにカンキツのleprosis virus (Kitajima and Costa, 1972)はOFVと同種または同系統のウイルスと考えられる。

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