日本植物病理学会報
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日本における五葉松類のCronartium stem rust(s)について
Ed F. WICKER横田 俊一
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1976 年 42 巻 2 号 p. 187-191

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抄録
今日,五葉松類のCronartium stem rustとしてC. ribicola J.C. FischerとC. kamtschaticum Jφrstadの2種が知られている。本報告では,まず後者がJφrstadによって命名されたいきさつと,この2種は専ら夏,冬胞子世代の寄主によって区別されていることをのべた。
1972年に北海道中標津町近くのストローブマツ造林地に発生したCronartium stem rustは接種試験と現地調査によって,シオガマ属植物(Pedicularis resupinata)とスグリ属植物(Ribes grossularia)の両者に寄生することが明らかにされた。
北アルプスの立山で採集されたハイマツのCronartium stem rustの銹胞子は中標津のストローブマツのものと同じ性質を示すことも確かめられた。また,北海道に自生するハイマツ上のCronartium stem rustには,冬胞子世代が不明のものがある(内生型?)。
筆者らは五葉松のCronatium stem rustの分類概念に生態学的な考えをとり入れなければならないと考えている。ハイマツと,C. ribicolaの寄生となる数種の五葉松類(Pinus sibirica, P. cembra, P. albicaulis, P. strobus, P. monticola等)との間の密接な系統学的関係は疑うべくもない。従ってC. kamtschaticumがハイマツだけをおかすとは考え難い。そこで筆者らは,現在C. kamtschaticumと命名されている銹病菌はC. ribicolaのecotypeではないかと想像している。ハイマツ上の内生型も同様で,本種の生態的な奥行きの深さを示していると考えたい。このようなC. ribicolaの種としての概念を確認するためには,十分計画された人工接種試験が必要である。
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