日本植物病理学会報
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イネわい化ウイルスの性状ならびに細胞内所見
山下 修一土居 養二與良 清
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1977 年 43 巻 3 号 p. 278-290

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抄録
イネわい化ウイルス(RWV)をクロロホルムで清澄化した後,分画遠心ならびにしょ糖密度勾配遠心により純化した。本ウイルスは径約30nmで,典型的な核蛋白の紫外線吸収を示した。また,しょ糖密度勾配遠心で単一の沈降バンドを生じ,沈降係数は約172Sと計算された。純化ウイルスを家兎に注射し抗血清(力価1,024倍)を作製した。本ウイルスは篩部細胞に局在して観察され,感染細胞では2種のタイプの封入体(Viroplasm)とVesiclesの誘導が特異的に認められた。ウイルス増殖の初期に誘導される高電子密度の結晶性封入体は一般に蛋白性の格子構造からなる。ウイルス粒子の産生は最初この封入体の表面で,次に内部で行われるように思われた。ウイルス粒子の増殖に伴い,結晶性封入体は電子密度が多少低下し,顆粒状封入体へと変化するように観察された。後者はRWV感染細胞に普通に観察され,常にウイルス粒子を付随してみられた。産生されたウイルス粒子はその内部で次第に数を増し,ときに集塊を形成した。また,小さなVesiclesが封入体の周囲やさらに高頻度で細胞膜に近接して誘導されるのが観察された。これは核酸繊維に酷似する網状物質を内包していた。ウイルス増殖が進むと,ウイルス粒子は封入体から細胞質や液胞へと放出され,液胞内ではしばしば大小の結晶配列が認められた。篩部壊死はごく普通に観察され,これによると思われる葉緑体内のでん粉堆積が葉肉細胞でしばしば観察された。
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