1. ユウガオつる割病菌保菌種子をは種した場合,は種後3∼5日より種皮中に潜伏する菌が増殖を開始した。発芽後種皮は主としてpegに密着した状態で残存した。
2. 発芽後種皮がpegに密着した正常な発芽を示した個体群の発病苗率は14∼18%と高率であったが,種皮が子葉に付着し地上部に露出したいわゆる冠皮発芽を示した個体群の発病苗率は2∼3%と極めて低率であった。
3. 保菌率の高いlotの種子をは種し,幼植物を本葉,子葉,胚軸,peg及び根部に分け,単位生体重あたりの菌量をみると,peg部位が菌検出頻度及び検出数ともに最も多く,次いで根部であった。
4. ユウガオ幼苗の根部,peg,胚軸及び子葉に有傷と無傷接種の2方法でユウガオつる割病菌を接種した。根部とpegでは有傷接種,無傷接種ともに高率に発病した。胚軸及び子葉においては,有傷接種では発病したが,無傷接種ではほとんど発病しなかった。
5. pegをミクロトーム切片として観察すると,菌糸は主としてpegの下面から侵入し,細胞内及び細胞間隙を貫通して伸展し,道管部に侵入した状態がみられた。走査型電子顕微鏡により観察すると,peg下表面にフザリウム菌とみられる菌体がしばしば観察された。
6. pegの上面は細胞が規則正しく並び,ち密な表皮構造を呈していたが,下面は二次的小突起に覆われ,分裂組織状を呈し,所々に根毛群が認められた。
7. 以上の結果から,保菌種子の発芽から発病に至る一過程として次の過程が想定された。即ちユウガオつる割病保菌種子がは種された場合,発芽と同時に種皮内部に潜伏する菌が増殖し,菌密度の高まった種皮は発芽後pegに密着し,種皮に分布する菌体がpeg下面から侵入して道管に達し,さらに茎葉の道管部に侵入し発病に至る。
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