抄録
加熱温度によって熱処理誘導感受性に本質的差異が生ずるか否かを明らかにする目的で,E. graminis hordei Race 1に対して殆んど免疫に近いnear isogenic lineの幼苗を45C-20min,55C-75secの熱量で処理後Race 1を接種し,その菌糸伸長並びにコロニー生育について比較した。55C-75sec処理葉の誘導感受性の持続時間は45C-20minのそれより長く,48-60時間であり,菌糸の生長,コロニー発達,胞子形成などの親和性指標も55C-75secにおいて著しく高かった。55C処理葉上の菌の発育程度は熱処理効果の持続時間のみでは説明できず,他の機構が作動しているものと考えた。熱処理効果の喪失に伴なって顕われる葉の感染反応は処理温度によって異なり,45C処理葉では主として黄化するのに対し,菌発育の顕著な55C処理葉においては褐変壊死が主反応であった。これらは異なった型の抵抗反応であり,いずれも葉組織細胞が加熱処理効果を喪失するとともに侵入菌を異物として認識した結果であると考えた。