1. シコクビエより分離された
Pyricularia sp.は種子伝染する。本菌に感染したシコクビエ種子の鱗皮は黒褐色に変色して種皮に密着する。各地より採集した種子の保菌率は5∼46%であった。
2. 1967年徳島県下で採集された種子の一部が,乾燥後-10C, R.R. 30%で保存されていたが,これから1976年に本菌を分離することができた。
3. 小穂の部位別に感染状態を調べると,苞頴,鱗皮の感染割合が多く,護頴,内頴,小軸,小梗にも感染が認められた。種子に混在する小穂の各種罹病器官は播種時に圃場内で伝染源になる可能性がある。
4. 変色種子を播種した時に発芽障害を起したもののうち,10∼40%は本菌が寄生していた。
Alternaria sp.,
Curvularia sp.による発芽障害もあった。
5. 保菌種子を土壌に播種し,25Cの高湿状態に保持したところ,17日後に苗の第3葉葉身,葉鞘に病斑が形成された。牧草として栽培する時,葉鞘の病斑は刈取り後の伝染源となる。
6. 罹病種子をベンレート水和剤の500ppm溶液に6時間浸漬処理するか,0.5%(重量比)粉衣処理をすると種子消毒が可能である。
7. 同一圃場のシコクビエ,オヒシバ,
Eleusine africana,
E. floccifoliaより分離したいもち病菌は,いずれもシコクビエに病原性を示し,イネに病原性がなかった。また,オヒシバ,
E. africanaに病原性があった。
8. イネを含む17種のイネ科植物およびミヨウガより分離したいもち病菌は,いずれもシコクビエに病原性がなかった。
9. シコクビエ,オヒシバ,エノコログサより分離した菌株はネズミムギ,オニウシノケグサ,ハルガヤ,クサヨシ,トウモロコシ,オオムギ,マカラスムギに病原性を示した。
10. 1973年,夏作牧草としてシコクビエを各地で試作し始めると同時にいもち病が発生したが,その原因は種子伝染によるものが主体であったと考えられる。他のイネ科植物などに寄生するいもち病菌が寄主転換したものとは考えにくい。ただし,オヒシバ,エノコログサ菌については,なお検討が必要である。
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