日本植物病理学会報
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イネ白葉枯病の抵抗性機作に関する研究
IV. 感染葉の細菌抑制物質の抽出と部分的精製
中西 清人渡辺 実
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1977 年 43 巻 4 号 p. 449-454

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抄録

イネ白葉枯病感染葉,とくに不親和性感染葉に生成される細菌抑制物質の有機溶媒による抽出と部分的精製を行なった。
1. 細菌抑制物質は主として酢酸エチル可溶酸性粗抽出物中に抽出され,250ppm濃度で感染葉抽出物に抗菌活性が明らかにみられたが,健全葉抽出物では同濃度で全く活性が認められなかった。また,酢酸エチル可溶塩基性粗抽出物中にも細菌抑制物質が存在したが,その生成量は少なく,感染によって抗菌活性が著しく減少した。
2. 酢酸エチル可溶酸性粗抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで部分的に精製した結果,細菌抑制物質は主として30%酢酸エチル・ヘキサン溶出画分に溶出した。健全葉では同画分の50ppm濃度で全く抗菌活性が認められなかったのに対し,感染葉では約88%の高いコロニー形成阻害率を示すほど抗菌活性が著しかった。
3. 感染葉の30%および50%酢酸エチル・ヘキサン溶出画分をシリカゲルTLCで精製した結果,それぞれ1個と2個の抗菌活性スポットを検出した。
4. 感染葉の30%酢酸エチル・ヘキサン溶出画分に含まれる細菌抑制物質は,TLCのRf値,紫外線下の蛍光,呈色反応などから,フェノール性物質のクロロゲン酸,コーヒー酸,フェルラ酸,バニリン酸,サリチル酸,クマリン化合物のp-クマル酸あるいはウンベリフェロンと異なることが推定された。

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