日本植物病理学会報
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健全エンバク葉に存在するさび菌発育阻害物質
鍋田 憲助門田 源一谷 利一志賀 宏志
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1977 年 43 巻 5 号 p. 575-582

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抄録

エンバク初生葉の水磨砕物から2種の抗菌性ステロイドを分離し,26-desglucoavenacosid (26-DGA) AおよびBと同定した。また,2種の抗菌性フラボノイドO"-rhamnosylisoswertisin (RIS)および未同定物質(UF)を分離した。Puccinia coronata avenae夏胞子の発芽管伸長阻害力はRISおよびUF(それぞれED50=1,500および500μg/ml)にくらべて26-DGA A, B (ED80=14μg/ml)が極めて大きかった。生重1gあたりの26-DGA A, Bの含量は水磨砕物からはそれぞれ930, 280μgと算出されたが,生葉を熱メタノールに浸漬後に磨砕した場合には両物質とも痕跡しか検出されなかった。一方,RISおよびUFの含量は両磨砕物間で変わらず,それぞれ750および300μg/g生重であった。なお,これら4物質以外の抗菌性物質は検出されなかった。以上の結果から,水磨砕物の抗菌性は主として26-DGA A, Bによるが,それらは磨砕による傷害のために生成されたものであり,intactな生葉ではRISとUFが抗菌性の主成分であると考える。ただし,これらの抗菌物質はエンバク-さび菌の組み合せにおける種間特異性には関与しないと推定した。

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