1978 年 44 巻 1 号 p. 35-46
クワ萎縮病の明瞭な病徴を示す一の瀬の罹病新梢から若葉を採取し,その葉柄を用いて,篩部組織内に分布するMLOの表面微細構造およびMLOコロニーの微細立体構造を,SEMおよびTEMを併用して観察した。
SEMを用いて篩部組織を観察すると,篩管,篩部柔細胞,伴細胞の順に,それぞれの細胞内には網目状の構造が発達していた。網目構造は150∼300nmの径を有する大小の球状粒子および叉状に分枝した約120nmの幅を有する多数のフィラメントから成り立っていた。SEMによる球状粒子の大きさおよびフィラメントの幅は,TEMによるMLOの測定結果とよく一致するので,網目構造はMLOコロニーと推定された。MLOはその発育過程で,球状粒子からフィラメントを数本派生し,さらに各フィラメントの先端は2叉状ないしは3叉状に分枝を繰返しながら生長するものと思われる。したがって,このような粒子が多数存在すると,フィラメントは互いに錯綜して網目構造を呈するようになると考えられる。
SEMによる表面微細構造の観点からみた,in vivoにおけるクワ萎縮病のMLOの諸形態は,in vitroで生育した動物のマイコプラズマの諸形態と本質的にはきわめて近似していた。