日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
わが国におけるレタスビッグベイン病の発生とその土壌伝染
岩木 満朗中野 昭信家村 浩海栃原 比呂志
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 44 巻 5 号 p. 578-584

詳細
抄録

和歌山県西牟屡郡白浜町のレタスに発生している虎斑症は病徴・伝搬様式などからlettuce big vein virusに起因する病害と同じか近縁な病害と同定した。
レタスにおける病徴は葉脈周辺が退緑し,退緑部と緑色部の境が明瞭で,葉脈が肥大したように見える。病葉を常法に従って数種検定植物に汁液接種したが反応は見られなかった。また,モモアカアブラムシによっても伝搬されなかった。さらにdip法および超薄切片法により電顕観察したが,ウイルス様粒了は検出されなかった。
発病地の土壌にレタス苗を植えつけたところ,高率に発病し,病土を熱消毒すると,その土壌伝染性は消失したが,3週間風乾しても土壌伝染性は保持されていた。病株の葉と根を消毒した土に混入し,レタス苗を植えつけたところ,根を入れた区でのみ発病し,病株の根にはすべてOlpidium菌と思われる休眠胞子や遊走子のうが観察された。この菌は休眠胞子や遊走子のうおよび遊走子の形態からOlpidium sp.と判断した。また病株の根から放出された遊走子により高率に伝染した。さらに本病は病株の茎頂を接ぐことにより容易に伝染したが,この病株の根にはOlpidium sp.は検出できず,またこの根からは土壌伝染しなかった。レタスの品種間には感受性に差異が認められなかった。10科30種の植物を同じ病土に1年間3回栽培しても土壌伝染性は消失しなかった。本病は種子伝染しなかった。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top