抄録
ジャガイモ葉巻ウイルスの診断に免疫電顕法を応用し,実験的に満足すべき結果を得た。
そのひとつの方法は,罹病ジャガイモ塊茎からの幼植物の汁液を清澄化し,それに希釈抗PLRV血清を加え,冷室で一晩反応させる。
反応液の1滴を電顕用支持膜(glow discharge処理したもの)にとり,UA染色後,電顕観察すると,PLRV粒子は特異的なウイルス凝集塊(clumping)として容易に検出された。
もうひとつの方法は,予め抗PLRV血清〔もしくはIgG (PLRVより作成した免疫グロブリンG,immunogloblin G,これについては,日植病報,44, 28-34を参照のこと)で被覆した支持膜に罹病葉からの清澄化液を1滴とり,15分間室温で反応させたのち,水洗し,再び抗血清(IgG)を1滴加える。この方法では,ウイルス粒子が抗体により支持膜に付着し,さらに2度目の抗体処理により,未反応の粒子表面は抗体で装飾(decoration)されるため, haloを呈し,直径も増大するので,個々の粒子の検出が容易であった。これらの方法は簡便かつ短時間で行なうことができ,それによるウイルス検出頻度も高いことから,本ウイルスの診断法として実用に供し得るものと考えられる。