抄録
植物組織内での軟腐病菌E. carotovora系統間の競合を検討するために,ファージ感受性の異なる6系統をアブラナ科野菜に混合接種し,病斑からの分離頻度を比較した。供試菌はいずれもストレプトマイシン耐性菌で,各々系統I(ファージ型:A), II (B), III (C), IV (D), V (E),およびVI (F)とした。この結果,病斑からの分離頻度が系統間で違うことが判明した。病斑形成の初期にはIII (C), IV (D), VI (F)の3系統が分離されたが,その後は各野菜とも系統VI (F)が優勢になった。同一病斑内の病原菌は単一の系統からなっていることが多かった。しかしながら,この他の系統は分離されなかった。ところが系統の組合せによって優勢になる系統が変わり,VI (F), III (C), IV (D), V (E), I (A)またはII (B)の順に優占順位があって,病原力の強い系統がいつも優勢になるとはかぎらなかった。各系統を単独に接種したときには,接種したものと同じ系統がそれぞれの病斑から分離された。これらの事実から植物組織内で軟腐病菌の系統間に競合がおこり,その中のある系統によって感染し,発病するものと考えられる。