1. いもち病菌の基質に依存する胞子形成の検討とイネ体に含まれる胞子形成を誘導する物質の探索を試みた。
2. いもち病菌(研53-33)はオートクレーブし,素寒天培地上に置床したイネ葉片上で旺盛に生育し,暗黒下でその上に多量の胞子を形成した。形成量は5.3×10
5/cm
2(イネ葉片)であり,病斑上のそれよりも著しく多かった。イネ葉片上の胞子形成量は葉位により差が認められた。
3. 近紫外光照射下で培養するとオートクレーブしたイネ葉片上の胞子形成量は7.6×10
5/cm
2となり,暗黒下における4.1×10
5/cm
2と比較して多かったが,約2倍にしかすぎなかった。
4. いもち病菌の胞子形成における基質依存と光依存とは菌株によって異っており,基質依存の菌株(例えば研53-33, Ai2-7など)は近紫外光を照射しても形成量が暗黒下とほとんど差がなかったが,光に依存する菌株(例えば北373, Ni2-14など)は近紫外光照射により形成量が約10∼40倍となった。
5. 植物組織乾燥粉末を胞子形成の基質として用いた場合,イネ葉で形成量が最も多く,次いでイタリアンライグラス葉であった。インゲン,ジャガイモ,ハツカダイコン葉では形成量が少なく,菌株により,形成するものとしないものとがあった。
6. イネ体には胞子形成を誘導する物質が含まれており,水,熱水,エタノール,およびメタノールで抽出された。
7. 各種溶媒を組合せ,抽出を行った結果,エタノール抽出物では100μg/ml以上で,エタノール可溶部をろ過し,さらにこの残渣の熱水抽出物では1000μg/ml以上で胞子形成誘導活性が認められた。
8. 熱水抽出物をイオン交換樹脂処理を行ったところ,活性物質は酸性物質としての性質を有しており,10μg/ml以上で胞子形成を誘導した。
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