1979 年 45 巻 5 号 p. 596-602
イタリアンライグラスかさ枯れ病菌,Pseudomonas coronafaciens var. atropurpurea,によって生産される菌体外毒素,コロナチンによるジャガイモ塊茎柔組織切片中の澱粉粒分解におよぼす影響を調べた。コロナチン処理により,澱粉粒,とくに長径30μm以下の比較的小型のものが優先的に消失し,それに伴い細胞も肥大した。本病原菌を接種した際にも,コロナチン処理の場合とほぼ同様の現象が観察された。コロナチン処理により,アミラーゼ活性はかなり増加したが,ホスホリラーゼおよび枝切酵素の活性はほとんど変化しなかった。上記のことから,コロナチン処理によるジャガイモ塊茎柔組織切片中の細胞の肥大は,アミラーゼ活性の増大により生じた澱粉粒の分解にもとづく細胞内浸透圧の増加と細胞壁の可塑性の増大により引き起されるものと考えられる。