日本植物病理学会報
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人工培地上に成育したコムギ赤さび病菌コロニーの形態および病原性について
安藤 勝彦佐藤 昭二勝屋 敬三
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1979 年 45 巻 5 号 p. 660-667

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抄録
コムギ赤さび病菌(Puccinia recondita f. sp. tritici) race 45の夏胞子をコムギ農林16号幼苗に接種し,フレックが出現した時点でコムギ葉を切り取り表面殺菌を行ない,葉小片を2種類の培地にそれぞれ静置し,20C暗所で培養した結果,高頻度でコロニーを獲得することに成功した。
培養2-4週間後,培地に静置したコムギ葉小片上に出現した気中菌糸は,コムギ葉組織内菌糸より伸長したものである。すなわち,コムギ葉上夏胞子堆周辺およびコムギ葉の気孔下に形成された菌糸塊に由来したものであって,コムギ葉上の夏胞子堆内夏胞子の発芽管に由来したものではないようである。
培養2-3ヶ月後に至り,コムギ葉上の白色コロニーは培地上へと伸長した。培養2ヶ月後,これらのコロニー小片を新鮮な培地へ継代培養した。その結果,継代成育を行なう白色および黄色のコロニーと,成育が認められない褐色および暗褐色のコロニーを観察した。光学顕微鏡観察により,前者は3-3.5μm巾の細い菌糸より成り,胞子形成は認められず,後者は5-8μm巾の太い菌糸より成り,多数の胞子形成が認められた。
褐色コロニーをMaclean and Scott9)の方法に従い無菌のコムギ葉小片に接触させ,コロニーの病原性を調査した結果,接種1ヶ月後に至り,22のコロニー中1コロニーにおいてコムギ葉上に夏胞子堆が形成された。
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