抄録
Erysiphe graminis f. sp. hordeiとE. graminis f. sp. triticiの分生胞子は,付着器が完成する数時間前に寄主細胞壁を貫穿する第一発芽管を作る。本論文は,走査電顕マニプレーターを用いて,E. pisi, E. cichoracearum, E. polygoniも同様の構造をもっているか否かを検討した結果である。比較のために,E. graminis f. sp. hordeiとE. graminis f. sp. agropyriも用いた。E. cichoracearumの分生胞子は接種後16時間に1本の発芽管を生じたのみであったが,E. pisiとE. polygoniの少数の分生胞子は複数発芽管を生じた。これらの種では,付着器のみが寄主侵入を行ない,他の発芽管は侵入しなかった。これに対して,E. graminisの両菌は,寄主侵入を行なう第一発芽管と付着器をもっていたが,後者からのみ吸器が発達した。これらの結果および過去の文献から,第一発芽管は,E. graminisの特徴の一つであろうと推定された。