日本植物病理学会報
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ニンニクに見出される2種のひも状ウイルス,ニンニク潜在ウイルス(garlic latent virus)ならびにニンニクモザイクウイルス(garlic mosaic virus)
李 龍雨山崎 昇三尾崎 武司井上 忠男
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1979 年 45 巻 5 号 p. 727-734

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抄録
本報はニンニクに見出される2種のひも状ウイルスを記載し,これらウイルスの各地のニンニクにおける分布を調べたものである。各ウイルスのニンニクにおける病徴にもとづき,従来の報告にみられたウイルス名についての若干の混乱を整理し,それぞれニンニク潜在ウイルス(garlic latent virus, GLV)およびニンニクモザイクウイルス(garlic mosaic virus, GMV)とあらためて命名した。
GLVは汁液接種でニンニクに無病徴全身感染し,ソラマメに全身えそ斑点病徴をあらわした。Chenopodium amaranticolor, C. quinoaおよびツルナには局部病斑を生じて全身感染しなかった。ウイルス粒子は長さ650∼700nmで屈曲の少ないひも状で,感染組織の細胞質内に散在または小集塊として認められた。粗汁液中での不活化温度は55∼60C (10分),希釈限度は10-4∼10-5,保存限度は2∼4日であった。純化ウイルスを兎に筋肉注射して得たGLV抗血清につき血清試験を行なったところ,GLVはGMV,キクウイルスB, carnation latent viursとの間に陽性の血清反応は得られなかった。
GMVは汁液接種でニンニクにモザイク病徴をあらわし,センニチコウの接種葉に局部えそ斑点を生じた。C. amaranticolor, C. quinoaおよびツルナには無病徴局部感染であった。GMV粒子は長さ約750nmの屈曲したひも状であり,感染植物細胞にはpinwheelなどの細胞質内封入体が観察された。GLV, GMVともにアブラムシ伝搬性の確認に至らなかった。
各地から集めたニンニクのモザイク病標本の多くはGLV, GMVの混合感染であったが,中にはGMV単独感染の品種や個体も見出された。
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