抄録
イネ白葉枯病菌株Q7472 (血清型A), Q7502 (血清型B-I)およびN5837 (血清型B-II)の各菌株からエタノール沈澱とプロナーゼ処理によって得られた粘液層および菌体多糖質抗原の液にそれぞれの抗血清を加え,沈澱する抗体の量を吸光度(287nm)で測定した結果,菌株ごとに異なる定量曲線が得られ,各菌株の多糖質抗原は血清学的に同質ではないことが示唆された。各血清型菌株の菌液,粘液多糖質および菌体多糖質の拡散性抗原を寒天ゲル内拡散法で比較した結果,菌株によって異なる数種類の抗原を検出した。これらの抗原のうちaは血清型Aの菌株に特異的な抗原であり,蒸溜水,生理食塩水,または0.5N三塩化酢酸により抽出可能であった。本抗原は熱(100C, 1時間)に安定で,エタノールで沈澱し,プロナーゼ処理によって不活性化しなかった。a以外の抗原には血清型特異的なものは認められなかった。