抄録
東北地方(青森,秋田,岩手,山形の4県)と南西諸島(沖縄本島,奄美大島)の48か所の土壌からPythium属菌を分離し,分布,種類,菌量などを検討した。植物については試料が得られた場合のみ検討した。土壌からの分離は, Waksmanの直接接種法の変法と,キュウリ,ルーピン,トウモロコシの種子を基質とした捕捉法の2方法を用いた。捕捉法では土壌に埋没した種子を一定温度下で1~7日間放置後取り出して素寒天培地(WA)上に置き,伸び出した単菌糸を分離して純粋分離株を得た。植物の根部からはWA上で単菌糸分離により直接分離株を得た。土壌からの分離の結果,東北地方では供試した27か所中25か所,南西諸島では21か所の全試料からPythium属菌が検出された。捕捉法における基質の土壌埋没時の処理温度は,分離される菌の種類に大きな影響があり,好高温性のP. aphanidermatumは,東北地方産の試料では, 36Cの高温下で分離した43株中10株を占めたが, 7Cと20Cの低温下では150株中わずか1株にすぎなかった。南西諸島産の試料では24Cでも106株中37株を占めたが, 7Cでは全く分離されなかった。また同菌は,東北地方産の4種の植物と南西諸島産3種の植物から分離された。植物の根部から分離された合計52菌株の温度反応を調べたところ,南西諸島産の15菌株は,東北地方産の37株と比較すると好高温性の菌株が多かった。土壌および植物からの分離菌は,未同定菌を除き,それぞれ13種と8種に同定された。また土壌中の菌量を直接接種法の変法により定量したところ乾土1g当たり50個以下の試料は,供試した48点中19点, 51~200個の試料は17点, 201~1040個の試料は12点であった。