抄録
黄玉, IR 28およびTe-tepの幼苗期における抵抗性発現の差異の機構を知るため, 4葉期のイネにT7174菌を針接種し,接種3日後に寄主組織の抵抗反応および侵入細菌の形状を電顕観察した。幼苗期に感受性ないしは感受性に近い反応を示す黄玉の導管内には繊維状物質(FM)はほとんど認められず,正常な短桿状を示す多数の侵入細菌がおう盛に分裂増殖していた。一方,幼苗期から高度の抵抗性を示すIR 28とTe-tepの導管内侵入細菌はいずれも高電子密度の不定形を示し,死滅状態に近いものが多かった。IR 28とTe-tepに侵入した細菌は導管壁内側層に由来して生じたと思われるFMに包囲されていることが特徴的であり,細菌の分裂増殖および移行がFMによって阻害されているように観察された。導管に隣接している維管束柔細胞の変性はIR 28とTe-tepの方が黄玉より顕著であった。また黄玉, IR 28およびTe-tepの導管内侵入細菌の大きさは,それぞれ1.25×0.50μm, 1.03×0.42μm, 1.05×0.41μmで,黄玉に侵入した細菌は他の2品種のそれに比べて有意に大きかった。以上の結果から, IR 28とTe-tepの導管内で認められたFMは本病の抵抗性発現に関与している可能性が高い。なおFMの化学的成分については明らかでなく,今後検討を要する。