日本植物病理学会報
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銀葉病菌の菌体外ラッカーゼの精製とリンゴ樹の木質部に対する作用
宮入 一夫村上 章奥野 智旦沢井 功
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1982 年 48 巻 2 号 p. 177-181

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抄録

PD培養液に29C, 20日間静置培養した銀葉病菌の培養〓液から,ラッカーゼをDEAE-セルロース,DE-52およびセファデックスG-100のカラムクロマトグラフィーにより,ディスク電気泳動的,超遠心的に均一標品として,90倍に精製した。p-フェニレンジアミン,グアイアコール,ピロガロール,カテコール,ハイドロキノンに対する精製標品の相対反応速度は,100, 86.9, 80.7, 79.7, 45であり,Km値は0.833, 0.760, 0.101, 2.63, 2.0mMであった。各種還元剤は2mMでほぼ完全に酵素反応を阻害したが,キレート剤は全く影響がなかった。健全なリンゴ苗木に注入した精製ラッカーゼは5,000単位(0.64mg)以上で木質部を褐変させた。また,熱処理したリンゴ樹木片に対して,100単位で顕著な褐変をおこしたが,未処理のものに対しては,1,000単位でもわずかな褐変しか認められなかった。これらの結果から,銀葉病に罹病したリンゴ樹の木部褐変に本菌の分泌するラッカーゼが関与していると考えられる。

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