日本植物病理学会報
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施設栽培のトマトおよびキュウリにおけるジカルボキシイミド系殺菌剤に対する耐性灰色かび病菌の発生
竹内 妙子長井 雄治
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1982 年 48 巻 2 号 p. 210-216

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抄録

本報告は,ジカルボキシイミド系殺菌剤が登録されてから1∼2年以内において,同剤に対する耐性灰色かび病菌の発生状況と防除効果の低下の有無について調べたものである。
1. 1980年春に千葉県のハウス栽培のトマトおよびキュウリからイプロジオンに耐性を示す灰色かび病菌が検出され,1981年にはこれらの耐性菌はさらに増大した。
2. 耐性菌の発生はジカルボキシイミド系殺菌剤の散布回数に応じて増加し,これらの薬剤の5回散布区では耐性菌検出果率は約50%に達した。
3. イプロジオン耐性菌は薬剤含有培地上では気中菌糸を生じ,薬剤無添加培地におけるよりも菌糸の生育速度が著しく抑えられたが,6.25, 12.5, 200, 400, 800ppmで,いずれも菌糸の伸長が認められた。しかし,25∼100ppmでは菌糸の伸長はほとんど認められなかった。
4. イプロジオンに耐性を示す分離菌は,プロシミドン,ビンクロゾリン,ジクロゾリンに交さ耐性を示し,これらの薬剤の6.25∼400ppm含有培地で胞子は発芽し,菌糸も生育した。
5. インゲン切離葉を用いて耐性菌に対するイプロジオン,プロシミドンおよびビンクロゾリンの病斑伸展抑制効果を調べたところ,いずれの薬剤も効果が劣った。
6. 耐性菌発生圃場におけるイプロジオン剤,プロシミドン剤の防除効果はスルフェン酸系剤に比べて劣り,防除効果の低下が認められた。

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