日本植物病理学会報
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日本におけるいもち病菌集団中の病原性遺伝子頻度に及ぼすイネ植物中の抵抗性遺伝子頻度の影響
清沢 茂久山口 秀和山田 昌雄
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1982 年 48 巻 2 号 p. 199-209

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抄録

日本におけるイネいもち病菌レース頻度に関する山田らの調査成績を使用して,それぞれの県の病原性遺伝子頻度を予測するための式をうるために重回帰分析を行った。それぞれの県における抵抗性遺伝子頻度は,1961年から1976年までの16年間のそれぞれの品種の作付面積〔「米穀の品種別作付状況」(食糧庁)による〕から計算した。抵抗性遺伝子(Pi-a, Pi-i, Pi-k, Pi-ta. Pi-ta2)の頻度と,それに対応する病原性遺伝子(Av-a+, Av-i+, Av-k+, Av-ta+, Av-ta2+)の頻度をarcsin変換した後,1976年の病原性遺伝子頻度を従属変数とし,1)それぞれの抵抗性遺伝子頻度と,2) 16年間の抵抗性遺伝子頻度から主成分分析法によってえた第1主成分と第2主成分,および3) 16年を5, 5, 6年の3つに分けたときのそれぞれの期間中の抵抗性遺伝子頻度の平均値とそれらの変化の勾配を独立変数として用いた3つの重回帰分析を行った。いずれも予測平方和を最少にするような変数を選んで3つの方法を比較し,最後の方法,すなわち16年間を3つに分けそれぞれの期間の抵抗性遺伝子頻度の平均値(M3, M2, M1)と変化の勾配(S3, S2, S1)を独立変数とした場合に,自由度で調整した寄与率が高く,また理解し易いという点でも利用価値が高い重回帰式がえられた。1976年の病原性遺伝子頻度(F)はF=0.14-1.89S2+1.44M1+0.53Da-0.62M12+0.63M1Dk+2.42S2Daで表わされた。ここで,S2は1967年から1971年までの5年間の抵抗性遺伝子頻度の変化の勾配,M1は1972年から1976年までの抵抗性遺伝子頻度の平均値,Da, DkはそれぞれPi-a遺伝子,Pi-k遺伝子に与えられたdummy変数である。

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