1982 年 48 巻 4 号 p. 471-481
灰色かび病菌の第2次付着器形成に対する核酸塩基プリン関連化合物(cyclic AMP, 5'-AMP 5'-IMP, adenosine, inosine)の誘導効果をスライドグラス上で検討した。これらの物質はキュウリ葉上の場合と同様に第2次付着器形成を誘導するが,中でもイノシンが最も顕著な効果を示した。化学構造上イノシンの類似物質であるホルマイシンBをイノシン溶液に添加すると,第2次付着器形成の誘導効果が抑えられ,両者間に競合関係のあることが明らかになった。つぎにイノシン処理菌体では,RNA, DNA両画分への14C-ウリジン,14C-チミジンの取り込み量が1∼3時間に促進され,続いてたんぱく画分への14C-アミノ酸混合物の取り込みが促進された。一方,ホルマイシンBはDNA画分への14C-チミジンの取り込みに対して,イノシンと競合することを示したが,他の画分では競合関係はみられなかった。以上のことから,イノシンによる第2次付着器形成誘導には,DNA合成が関与し,そのDNAに基づくRNA,たんぱく合成など一連の生合成系が関与すると考えられる。