日本植物病理学会報
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一圃場に存在するRhizoctonia solani Kühn菌糸融合群内クローンの多様性
生越 明宇井 格生
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1983 年 49 巻 2 号 p. 239-245

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抄録

一圃場内に存在するRhizoctonia solani Kühn菌糸融合群のクローンをジャガイモ,テンサイ,水稲の各圃場について調べた。ジャガイモでは3圃場で採取した塊茎から,テンサイでは10圃場の採集土壌から,水稲では1圃場の罹病桿からR. solaniを分離した。分離されたR. solaniは,ジャガイモではAG-3,テンサイではAG-2-2,水稲ではAG-1がほとんどであった。分離菌株を相互に培地上で菌糸融合させ,S reactionを示すものは同じクローン,K reactionを示すものは異なるクローンと判定した。ジャガイモの1塊茎からのAG-3分離株相互の菌糸融合は,ほとんどがS reactionであり,1クローンによって占められていた。同一圃場の異なる塊茎からの分離株間ではほとんどが,異なる圃場の分離株間ではすべてがK reactionを示し,それぞれ異なるクローンであった。テンサイでは,1地点からのAG-2-2分離株相互の菌糸融合は,ほとんどがS reactionであったが,1圃場内でも異なった地点からの分離株間では,ほとんどがK reactionを示した。同一地域内でも圃場が異なれば,すべてK reactionであった。水稲では,同一桿上の多数病斑からえたAG-1分離株間では,ほとんどがS reactionを示したが,近隣の稲株からの分離菌株間ではK reactionが多くなり,離れた稲株の菌株はほとんどがK reactionを示した。11アールの本水田には41クローンが存在した。水稲では同一クローンの分布は限られている場合が多かったが,なかには非常に離れた所にまで分布しているものもあった。以上の結果から,一つの圃場はそこに生育する作物に病原性を有する特定の菌糸融合群によって占められること,一つの圃場内の菌糸融合群には多数のクローンが存在すること,また1クローンの圃場内の分布範囲は非常に限られていることが判明した。

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