日本植物病理学会報
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雪腐小粒菌核病における各病原菌の生態的地位の分化
松本 直幸佐藤 徹
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1983 年 49 巻 3 号 p. 293-298

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抄録

雪腐小粒菌核病菌Typhula spp.の異所性に関与する要因を明らかにするため2つの実験を行った。秋播小麦を育苗箱に播種し,2か月間戸外で育成し,その後1か月間は,その半数を無加温ガラス室で人工光により補光栽培し,残りの半数は戸外で遮光栽培して,越冬性を異にする個体群をつくった。これらに雪腐褐色小粒菌核病菌T. incarnataあるいは雪腐黒色小粒菌核病菌T. ishikariensis生物型Bを接種し,発病を比較した。補光植物は越冬性が優れ,T. ishikariensis生物型Bのみにより著しい被害を受けたが,T. incarnataには侵されなかった。遮光植物は越冬性が劣り,両病原菌によって著しい被害を受けた。T. incarnataT. ishikariensis生物型A, BおよびCを2つずつ組合せてオーチャードグラスに接種し,発病程度と発病個体に形成された菌核の種類から,競争力の強さを比較した。競争力は病原力中程度の生物型Aが最も強く,次いで病原力の弱いT. incarnataで,病原力の強い生物型B, Cは最も弱かった。これら生態的性質の違いに基いて,雪腐小粒菌核病菌における生態的地位の分化を異所性と関連させながら論議した。

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