日本植物病理学会報
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ウリ類炭そ病菌の付着器侵入におけるセルローズ膜の化学的分解の役割
鈴木 一実古澤 巖山本 昌木
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1983 年 49 巻 4 号 p. 481-487

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抄録
ウリ類炭そ病菌の付着器によって,セルローズ膜上に形成されるハローと付着器形成時に合成される蛋白質について調べ,付着器によるセルローズ膜への侵入過程におけるセルローズ膜の化学的分解の意義について検討した。付着器形成時のみに合成される分子量95キロダルトンのポリペプチド(P-95)の消長は,セルローズの分解活性とセルローズ膜上にみられるハロー形成との両者に相関した。このことはP-95が侵入部位にハロー形成をもたらすセルラーゼと関係していることを示している。シクロヘキシイミド存在下で形成された付着器ではハロー形成・侵入菌糸の形成は起こらないが,貫せん糸は膜と付着器の接触部位にみられた。シクロヘキシイミドを除去すると,これらの付着器は栄養存在下でセルローズ膜内に侵入菌糸を伸長させた。さらに,付着器が成熟したのち,栄養存在下で培養したときには、ハロー形成は抑制されたが,侵入菌糸の形成は影響されなかった。これらの知見は,ハロー形成をひき起こすセルローズ膜の化学的分解は付着器の形態形成時に生合成される蛋白質に依存し,侵入菌糸の形成に必要な栄養供給のために重要な役割を演じていることを示唆している。
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