日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
タバコ輪点ウイルスとダイコンひだ葉モザイクウイルスの保存に及ぼす各種添加物の影響
福本 文良栃原 比呂志
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 50 巻 2 号 p. 158-165

詳細
抄録

Nepovirusに属するタバコ輪点ウイルス(TRSV)とComovirusに属するダイコンひだ葉モザイクウイルス(RMV)を主として供試し,ウイルス標品に各種添加物を加えて凍結および凍結乾燥保存を行った。
TRSVは凍結処理により病原性およびウイルス粒子に影響が認められなかった。-20Cの凍結保存では,0.5%ペプトン添加で長期間高い病原性が維持された。TRSVは凍結乾燥処理により病原性が3%に低下し粒子内からRNAが放出されたが,1%ぶどう糖添加によって99%の病原性が維持された。無添加の凍結乾燥標品は65C, 30分で病原性が失われたが,1%ぶどう糖添加区では8時間後でも病原性が認められた。病原性の低下とウイルス粒子のしょ糖濃度勾配遠心分離沈降図にみられる変化との間には密接な関係が認められた。
RMVは凍結処理で粒子の一部がRNAと外被蛋白に分離した。-20Cの凍結保存では0.5%ペプトン添加により長期間高い病原性が維持された。RMVは凍結乾燥でRNAの放出と粒子の崩壊が起こり,病原性は約20%に低下した。しかし,1%ぶどう糖あるいは1%ソルビトール等の添加で保護効果が認められた。無添加の凍結乾燥標品は65C,4時間保存で病原性がほとんど認められなくなったが,0.5%リジン添加区では48時間後でも病原性が認められた。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top