日本植物病理学会報
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Erwinia carotovoraにおけるRP4::Muの伝達と染色体遺伝子への影響
村田 伸夫藤井 溥村田 仁
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1984 年 50 巻 2 号 p. 241-248

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抄録

Erwinia carotovoraE. chrysanthemi, E. amylovora,およびE. herbicolaと異なり,腸内細菌由来のF-因子やR-因子と親和性がなく,このため今まで遺伝分析手段が得られないままになっていた。このため,Mu-プロファージをRP4::Muの形でE. carotovoraに導入することにより,染色体上の遺伝子の系統間の移行を可能にしようと試みた。RP4::Mucts61(熱誘導性のMu-プロファージがRP4に結合したプラズミド)を大腸菌BE228を供与菌としてE. carotovora subsp. carotovoraの2系統,E. carotovora subsp. atroseptica, E. chrysanthemiおよびE. rubrifaciensの各1系統に導入し得た。トランスコンジュガントにおける,Mu-プロファージの熱誘導,およびトランスコンジュガントから他のErwiniaの系統へのRP::Muの移行を確認した。Mu-ファージを37Cで部分的に熱誘導し平板培養すると,約半数の集落がRP4による薬剤耐性を失う。また同様の処理により,リジン要求菌を得た。Mu-プロファージを部分的に誘導した供与菌と,Mu-プロファージをもつ受容菌の間で染色体上の遺伝子が移行するか否か調べ,E. carotovoraの供与菌-受容菌の間でリジン合成能およびストレプトマイシン耐性が,それぞれ供与菌あたり3.4×10-9∼4.2×10-7および1∼1.2×10-8の頻度で移行することを観察した。また,RP4::MuをもつE. chrysanthemiとリジン要求性のE. carotovoraの間でリジン合成能が移行することも観察した。染色体遺伝子の移行が認められたトランスコンジュガントの多くはRP4の薬剤耐性マーカーを失っていた。

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