抄録
イネ紋枯病菌の菌糸細胞中では3種の蛋白質の燐酸化が環状アデニル酸(cAMP)添加によって促進された。これらの蛋白質の分子量は25,000, 32,000,および62,000であった。これらのうち,分子量62,000の蛋白質(62K蛋白質)はcAMP存在下で5分以内に燐酸化され,この燐酸化に必要なATP濃度は20μMで飽和状態になった。62K蛋白質の燐酸化におけるcAMPに対するKa値は0.1μMであった。菌核形成可能な菌糸細胞内のNAD依存性グルタミン酸脱水素活性はATPとcAMPによって阻害された。この酵素活性の阻害は20μMのATPによって飽和に達し,そのcAMPに対するKi値は0.1μMであった。これらの結果はNAD依存性グルタミン酸脱水素酵素の阻害がcAMP依存性の蛋白質キナーゼによる燐酸化によって調節されていることを示唆している。