幅広い病原性スペクトラムを持ち,同時に病原性の異なる菌株を分出する性質を持つイネいもち病菌の1変異株(レース337)から2菌株を供試し,3種類の真性抵抗性遺伝子を一つずつ持つ6品種のイネ葉身上で連続的に9世代目まで継代接種することにより,変異株の出現及び優勢レースの変動について検討した。
供試した2菌株を6品種のイネ上でそれぞれ継代接種した12組合せのうち4組合せで,9世代目までに優勢レースが変動した。特に,真性抵抗性遺伝子
Pi-aを持つ愛知旭及びフジミノリの2品種上では,4組合せ中3組合せで,通常野外で同品種から最も高率に分離されるレース003が出現し,母菌のレース337に代って優勢レースとなった。また,
Pi-i遺伝子を持つ石狩白毛葉身上では,レース047が優勢となった組合せがみられた。しかし,
Pi-i遺伝子を持つ他の品種ふくゆき,更に,
Pi-k遺伝子を持つ関東51号及びクサブエ葉身上では,いずれの場合も優勢レースの変動は認められず,母菌のレース337及び137が優勢を保持した。
これらの結果から,本実験で優勢レースが変動した組合せでは,母菌のレース337が継代接種中に多くの変異株を分出し,その中の特にイネの抵抗性遺伝子に適応した変異株が他の菌株との競合に打ち勝ち,代って優勢となったものと推察された。
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