抄録
イネもみ枯細菌病菌は継代培養中に容易にその病原性を失うことが知られており,病原性とプラスミドとの関連性を検討した。幼苗と籾に病原性を示す5菌株と継代保存中に両者に対する病原性を失った5菌株からアルカリ法によりプラスミドを分離し,0.7%アガロースゲル電気泳動によりそのパターンを比較した。その結果,全供試菌株はそれぞれ分子量約8-135 Mdalのプラスミドを2∼6個有していたが,それらのプラスミドパターンは菌株毎に異っており,病原性との関連性は認められなかった。また,N7501菌株とそれから病原性を失ったN7501-av菌株のプラスミドパターンは全く同一であった。これらの結果から,イネもみ枯細菌病菌の病原性発現に対してプラスミドは直接的には関与していないものと考えられる。さらに大型プラスミドをも検討したが,その存在は認められなかった。