日本植物病理学会報
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内部黒変症を示すワサビ根茎および中心柱黒変を示す根から分離した軟腐病細菌の分類学的研究
後藤 正夫松本 邦彦
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1986 年 52 巻 1 号 p. 69-77

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抄録
ワサビの罹病根茎および根から分離したErwinia属軟腐病菌68菌株およびPseudomonas属軟腐病菌78菌株を用いて分類学的研究を行なった。Erwinia属軟腐病菌は細菌学的性質から4群に分けられた。第1群菌株はE. rhaponticiと同定されたが,何れの菌株も紅色色素を生産しない点で一般のE. rhaponticiと異なった。第4菌群はE. carotovora subsp. carotovoraと一致した。第3菌群はトレハロース利用性など2, 3の性質で第4菌群と異なったが,その他の性質では完全に一致し, subsp. carotovoraと同定した。第2群菌株はラクトースからの酸生成の遅延,β-ガラクトシダーセの欠落,メリビオースおよびラフィノースの非利用性, KCNブロス, 5% NaClブロスおよび36Cにおける非増殖性などの諸性質でsubsp. carotovoraと異なり,新しい分類群に所属するものと考えられた。Pseudomonas属軟腐病菌は細菌学的性質によって5群に分けられた。このうち第1, 2および5群は相互にレバン生成,タバコ過敏感反応などで異なったが,その他の性質で高い類似性を示し,それらの比較からP. marginalisと同定した。第4菌群は若干の性質の相違はみられたが, LOPAT試験を含むその他の細菌学的性状の高い類似性からP. viridiflavaと同定した。第3菌群はLOPAT試験ではP. viridiflavaの反応に一致したが,その他の生理・生化学的性状で大きく異なり,これまでに記載されたいかなる. Pseudomonas属軟腐病菌とも一致しなかった。この群の分類学的所属については今後の研究によって明らかにしたい。
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