1986 年 52 巻 3 号 p. 428-436
イチゴ黒斑病菌(Alternaria alternata strawberry pathotype)の生成する宿主特異的毒素(AF毒素)の化学構造が決定され,そのイチゴおよびナシに対する生物活性を再検討した。AF毒素Iは,感受性品種の盛岡16号イチゴおよび二十世紀ナシにそれぞれ3.2×10-8Mという極めて低濃度まで壊死形成を誘起した。AF毒素IIは,二十世紀ナシに対してのみ2.6×10-8Mまで,また毒素IIIはイチゴには3.1×10-7Mまで,二十世紀ナシには1.6×10-5Mまで壊死形成を誘起した。一方,イチゴおよびナシの抵抗性品種には,いずれの毒素も10-4Mの高濃度でも全く毒性を示さなかった。さらに,盛岡16号イチゴ葉にAF毒素IIで前処理することによって, AF毒素1の作用および黒斑病菌の感染に対する保護効果を検討した。18時間前にあらかじめ毒素IIで有傷滴下処理したイチゴ葉では,毒素IによるK+の異常漏出や壊死形成が著しく抑制された。この場合,毒素IとIIの比率が1:10のときに80%以上の高い保護効果が得られた。また,毒素IIによる前処理区では,対照区に比べて病原菌を接種して出現する病斑数も減少する傾向がみられた。