北海道のテンサイ畑に生息する
Polymyxa属菌の同定および分類を行なうため,そう根病の発生土壌に植えた各種植物に寄生した
Polymyxaの形態および宿主範囲を比較した。用いた植物は23科108種で,そのうちアカザ科,ヒユ科およびスベリヒユ科植物の細根表面の細胞および皮層に
Polymyxa sp.の寄生が認められた。これら菌株の形態には互に差がなく,
P. betae Keskinの原記載と同様であった。テンサイ,ホウレンソウ,
Chenopodium murale, C. ficifolium,シロザ,アオビュおよびスベリヒユから分離された菌株を用いてそれぞれの分離源植物に交互接種を行い,寄生性を比較した結果,各菌株の寄生は分離源と同じ科の植物に限られた。ただし,アカザ科植物から分離された菌株はアカザ科の多くの植物を共通宿主とするものの,テンサイ菌株はシロザに,シロザ菌株はテンサイにそれぞれ寄生しなかった。これらの結果から北海道の
P. betaeはいくつかの分化型に分かれるものと考えられた。即ちアオビユから分離された菌株は
P. betae f. sp.
amaranthiと同定され,スベリヒユから分離された菌株は新しい分化型,
P. betae f. sp.
Portulacaeとして記載した。テンサイとシロザから分離された菌株はそれぞれ別の分化型にすべきであるが,両菌株の分類はカナダのシロザ菌株との直接的な比較を行なってから決めたい。以上の結果,そう根病の発生にはテンサイ,フダンソウなど
Beta vulgarisに高い寄生性を持っているテンサイ菌株が関係し,他の2つの分化型およびシロザ菌株は関係していないと考えられる。
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