日本植物病理学会報
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Alternaria alternata群病原菌における宿主特異的毒素生成の制御(4)AK毒素生成菌にのみ発現される遺伝子のクローニング
柘植 尚志小林 裕和西村 正暘
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1986 年 52 巻 4 号 p. 690-699

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抄録
宿主特異的毒素(以下HST)依存の病原性を示すA. alternata群病原菌では,完全世代が発見されておらず,病原性を支配するHST生成の遺伝解析はなされていない。そこで,ナシ黒斑病菌(AK毒素生成菌) No. 15A菌株とその毒素生成能失活株No. 15B菌株を用い,遺伝子レベルでの比較検討を行なった。両株菌体よりDNAおよびRNAを調製し,それらの相同性を利用したコンペティティブハイブリダイゼーションを行なった結果, 15A菌株のみに特定のRNAが多量に存在することが明らかとなった。なお,このRNAは, 15B菌株のDNAに対しても相補性を持つmRNAであることを確認した。そこで, 15A菌株のcDNAクローニングを試みた。その全RNAからポリ(A)+RNAを調製し, cDNAを作成した。これをpBR322のPstI部位に挿入して,大腸菌RR1菌株を形質転換した。得られた586の形質転換体から, 15A菌株および15B菌株のRNAによるコンペティティブコロニーハイブリダイゼーションにより, 8個のポジティブクローンを選抜した。各種A. alternata菌株を用いて,プラスミドに組み込まれたcDNAと相補性を持つmRNA量を,そのうち4クローンについて検定した。その結果, AK毒素生成菌株,その他のHST生成菌株および腐生的菌株に比べ, AK毒素生成能失活菌株においてのみ,著しく転写量の少ないmRNAが見いだされた。
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