抄録
岐阜県高山市を中心とするハウス栽培ホウレンソウに立枯病をおこすPythium菌の同定を行った。ホウレンソウ栽培ハウス土壌を用いたポット試験で立枯株率とPythium spp.の分離率との間に高い相関(r=0.9028**)が認められた。立枯病の発生はべん毛菌類を特異的に抑制するDAPA剤の処理により著しく減少した。立枯苗から分離されたPythium菌は10Cと35Cにおける菌糸伸長に基づき2っのグループに類別でき,それらは形態的特徴からPythium aphanidermatumとP. paroecandrumと同定した。両菌の培地上における菌糸生育適温はそれぞれ35C, 25-30Cで比較的高温にあった。両菌ともホウレンソウに対して強い病原性を示し,ホウレンソウの品種間に抵抗性の差異は認められなかった。両菌ともホウレンソウの他にキュウリ,カボチャ,スイカ,インゲンマメ,ダイズに強い病原性を示し,ハクサイ,ダイコン,カブ,レタス,ニンジン,セルリー,トウモロコシ,オオムギには病原性が認められなかった。トマトとナスでは生育遅延がおこり,エンドウ,コムギには30Cで病原性を示した。