抄録
野外における葉の水分状態は水ポテンシャル(Ψw)などによってとらえられるが,これらの測定では圧ポテンシャル(Ψp)や細胞の初発原形質分離点(ψt1pw)などの値を求めることができない。そこで,P-V (pressure-volume)曲線を用いて病徴の進展に伴うコントルタマツ(Pinus contorta)の水分特性の変化について検討を加えた。コントルタマツは水分欠乏状態では浸透ポテンシャル(Ψs)を調節してψt1pwを低下させる。そして,クロロシス発生時点までは,細胞の体積弾性率(ε)には大きな変化は現れない。ナラタケ病に感染した苗木ではψt1pwの低下は小さいが,εは増大した。青変菌の産生する毒性物質の生物検定では,Ceratocystis minorの代謝産物のみがコントルタマツの水分特性に著しい影響を及ぼした。ψt1pwは低下し,εは約3倍に増大した。εのこのような増大は,病徴の進展や毒性物質の吸収によって細胞壁が弾性を失い,硬化した結果と考えられる。P-V曲線を用いたこのような水分特性の測定法は,肉眼的には判別のつけにくい樹木の萎凋病などの病徴の進展をとらえる上で有効な方法と考えられる。