Xa-1主働遺伝子に支配されるイネ白葉枯病抵抗性の発現の様相を明らかにするため,同抵抗性遺伝子を有する黄玉群品種にイネ白葉枯病菌I群菌を接種し,病徴発現及び葉組織におけるI群菌の増殖を調べた。
Xa-1主働遺伝子を有する黄玉群9品種の成稲は病原力の異なるI群菌3菌株のいずれに対しても無病徴型の抵抗反応を示した。黄玉を代表品種として,単針接種によりI群菌の強病原力菌株T7174及び弱病原力菌株Q6808の増殖を経時的に調べたところ,両菌株とも接種後2日ころから増殖を始めたが,増殖率は親和性菌株に比べて低く,接種12日後においても1接種箇所当り10
6 cfu以下であった。また,黄玉に病原力の異なるI群菌6菌株を単針接種し,接種12日後における増殖程度を比較した結果,いずれの菌株も1接種箇所当り10
6 cfu以下にとどまり,各菌株の増殖程度はそれらの病原力と並行関係にあるようであった。さらに,
Xa-1主働遺伝子を有する黄玉群9品種にI群菌T7174及びQ6808を同様に接種し,接種12日後の増殖程度を調べたところ,すべての供試品種において,T7174は10
5から10
6 cfuの範囲に,またQ6808は10
4から10
5 cfuの範囲にあった。以上のように,
Xa-1主働遺伝子に支配される抵抗性が十分に発現した場合,非親和性I群菌の増殖程度は典型的病徴の発現限界点10
6 cfu以下に抑制され,しかも同抵抗性遺伝子は宿主細胞の壊死を誘導しないため,無病徴型の抵抗反応となるものと推定された。
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