日本植物病理学会報
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53 巻, 1 号
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  • 比留木 忠治
    1987 年 53 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    未報告のHibiscus heterophyllusのてんぐ巣病がオーストラリヤ,クィーンズランド州で発見された。罹病植物には典型的なてんぐ巣症状,節間の萎縮,葉の黄化および成熟葉の葉縁の着色がみられ,花蕾の着生はいちじるしく阻害された。罹病および正常植物の葉柄と茎部の組織と細胞について光学顕微鏡と電子顕微鏡によって比較観察をおこなった。マイコプラズマ様微生物(MLO)が罹病植物の師管部に認められ,本病はマイコプラズマ病と判明した。これらのMLOは螢光顕微鏡下でDAPI (4', 6-diamidino-2-phenylindole・2-HCl)染色によりDNA特有の螢光を発し,感染師部にはアニリン・ブルー染色でカロースの異常集積が確認された。これらの師部細胞のDienes染色に対する反応は陽性であった。
  • 第7報 カンキツの自己防衛反応における表皮細胞の役割
    有本 裕, 本間 保男
    1987 年 53 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツ黒点病はDiaporthe citriの侵入により誘導される防衛反応の結果として形成されるものであり,病原菌は病斑内に封じ込められる。カンキツの自己防衛反応には表皮細胞が必須であり,表皮細胞を除くと病原菌の侵入をうけても自己防衛反応は起こらない。これは,自己防衛反応を誘起する因子は表皮細胞中にのみ分布しており,表皮細胞が傷をうけると活性化され,その作用で誘起されるためと考えられた。D. citriの侵入に対し,自己防衛反応を行うことができないと,病原菌は宿主内で蔓延し,ついには柄子殻や柄胞子を形成する。すなわち,自己防衛反応による防衛組織である黒点病斑は侵入病原菌の封じ込めに極めて有効である。
  • 1. Xa-1主働遺伝子に支配される抵抗性の発現
    加来 久敏, 木村 俊彦
    1987 年 53 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Xa-1主働遺伝子に支配されるイネ白葉枯病抵抗性の発現の様相を明らかにするため,同抵抗性遺伝子を有する黄玉群品種にイネ白葉枯病菌I群菌を接種し,病徴発現及び葉組織におけるI群菌の増殖を調べた。Xa-1主働遺伝子を有する黄玉群9品種の成稲は病原力の異なるI群菌3菌株のいずれに対しても無病徴型の抵抗反応を示した。黄玉を代表品種として,単針接種によりI群菌の強病原力菌株T7174及び弱病原力菌株Q6808の増殖を経時的に調べたところ,両菌株とも接種後2日ころから増殖を始めたが,増殖率は親和性菌株に比べて低く,接種12日後においても1接種箇所当り106 cfu以下であった。また,黄玉に病原力の異なるI群菌6菌株を単針接種し,接種12日後における増殖程度を比較した結果,いずれの菌株も1接種箇所当り106 cfu以下にとどまり,各菌株の増殖程度はそれらの病原力と並行関係にあるようであった。さらに,Xa-1主働遺伝子を有する黄玉群9品種にI群菌T7174及びQ6808を同様に接種し,接種12日後の増殖程度を調べたところ,すべての供試品種において,T7174は105から106 cfuの範囲に,またQ6808は104から105 cfuの範囲にあった。以上のように,Xa-1主働遺伝子に支配される抵抗性が十分に発現した場合,非親和性I群菌の増殖程度は典型的病徴の発現限界点106 cfu以下に抑制され,しかも同抵抗性遺伝子は宿主細胞の壊死を誘導しないため,無病徴型の抵抗反応となるものと推定された。
  • 山本 弘幸, 谷 利一
    1987 年 53 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンバク冠さび菌親和性レース夏胞子堆の分化時におけるエンバク葉肉細胞核の変化について調べた。まず,葉肉細胞核の分離方法を検討し,90分以内に約50%の収量で宿主核を得る方法を確立した。分離核のDNA, RNAおよび蛋白含量は測定期間中健・病間に差異はなかった。しかし,3H-UTPの酸不溶部への取込みは夏胞子堆分化初期(接種4および5日後)に健全核の約1.5倍に増高した。同時期の転写活性は,α-アマニチンにより阻害されないことより,質的変化の生じることを示唆した。
  • 小泉 信三, 加藤 肇
    1987 年 53 巻 1 号 p. 28-38
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    試験圃で蔓延したイネいもち病菌レース003に対し,罹病性イネ品種として農林29号,抵抗性イネ品種としてとりで1号およびフクニシキを用い,それぞれを畑苗代および本田で混植栽培した。畑苗代での葉いもちの病勢進展はdx/dt=rx(1-x) (x:罹病性品種の株病斑面積率,r:伝染速度)に適合し,混植区のr (rm)と罹病性品種の混植割合(m)との間にはrm=rs+clogem (rs:罹病性品種単植区のr, c:定数)の関係を認めた。区の中央に伝染源を置いた本田試験では,伝染源からの株数(x)と罹病性品種の株あたり進展型病斑数(y)にlog10y=A+Blog10x (A, B定数)の関係があり,伝染源からのyの勾配をあらわすB値は病勢が進展するに従い,かつ罹病性品種の混値割合の増加とともに増大した。各区のA, B値を用い,log10y=A+Blog10xより区内の総進展型病斑数を推定し,この推定値をさらに罹病性品種の混植率で割って本田での混植効果を検討した。その結果,混植区では罹病性品種単植区と比べ,罹病性品種における推定病斑数が少なく,各区内の総進展型病斑数を用いた各調査時期間の指数型曲線による伝染速度はrm=rs+clogemに近似した。
  • 鈴木 和夫, 平塚 保之, William A. AYER
    1987 年 53 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    野外における葉の水分状態は水ポテンシャル(Ψw)などによってとらえられるが,これらの測定では圧ポテンシャル(Ψp)や細胞の初発原形質分離点(ψt1pw)などの値を求めることができない。そこで,P-V (pressure-volume)曲線を用いて病徴の進展に伴うコントルタマツ(Pinus contorta)の水分特性の変化について検討を加えた。コントルタマツは水分欠乏状態では浸透ポテンシャル(Ψs)を調節してψt1pwを低下させる。そして,クロロシス発生時点までは,細胞の体積弾性率(ε)には大きな変化は現れない。ナラタケ病に感染した苗木ではψt1pwの低下は小さいが,εは増大した。青変菌の産生する毒性物質の生物検定では,Ceratocystis minorの代謝産物のみがコントルタマツの水分特性に著しい影響を及ぼした。ψt1pwは低下し,εは約3倍に増大した。εのこのような増大は,病徴の進展や毒性物質の吸収によって細胞壁が弾性を失い,硬化した結果と考えられる。P-V曲線を用いたこのような水分特性の測定法は,肉眼的には判別のつけにくい樹木の萎凋病などの病徴の進展をとらえる上で有効な方法と考えられる。
  • 阿久津 克己, 内田 誠, 入野 達之, 奥山 哲
    1987 年 53 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1×10-3Mイノシン溶液(2.5%グルコース含有)にけん濁した胞子を培養したスライドグラス上で,菌核形成が認められた。イノシン存在下では培養5日後,菌叢中心部に菌核形成が見られたが,グルコース単独下では培養7日以降に周縁部で僅かに菌核形成が観察された。光顕観察から,菌核の初期形成は多細胞型付着器形成と同様に菌糸先端細胞の叉状分枝によって起り,その後叉状分枝を繰り返すと共にメラニン様色素の沈着によって,菌核が形成されるようである。多細胞型付着器形成を促進する物質(環状AMP,アデノシン,アデニン)は,菌核形成も促進し,付着器形成同様にイノシンが最も顕著な効果を示した.次に菌核形成を,多細胞型付着器による感染成否との関係から調べた。イノシン存在下のキュウリ葉上で,本菌胞子は多細胞型付着器を形成して侵入し,進展性病斑を形成するが,イネ(非宿主植物)葉では感染阻止を示す壊死病班(非進展性病斑)とともに菌核の形成が認められた。光顕観察で多細胞型付着器からの菌核形成を示唆する菌糸体構造が観察され,更にこれらの構造下のイネ表皮細胞には壊死反応が認められた。
  • 美濃 羊輔, 松下 恭樹, 酒井 隆太郎
    1987 年 53 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ソラマメおよびイタリアンライグラスの葉を用いて,気孔の開口におよぼすコロナチンの影響を調べた。ソラマメの気孔の開度はコロナチンの濃度が高まるにつれ増大し,10-6Mで最大に達した。またコロナチンによる気孔の開口は,処理1時間後に認められた。イタリアンライグラスの場合にも,コロナチン処理により著しい気孔の開口が認められた。
  • 高松 進, 一谷 多喜郎
    1987 年 53 巻 1 号 p. 56-59
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pythium iwayamai, P. okanoganense and P. paddicum, the main causal organisms of Pythium snow rot, were isolated from rotted leaves of wheat and barley grown in 122 paddy fields and 7 upland fields between 1982 and 1986. P. paddium was the dominant pathogen in ill-drained paddy fields in the previous season. From well-drained paddy fields, all three pathogens were isolated independently or simultaneously. On the other hand, P. iwayamai was the dominant pathogen in upland fields. The results indicate that distribution of the pathogens may vary with the degree of drainage in the fields.
  • 上田 一郎, 李 相龍, 吉本 秀子, 四方 英四郎
    1987 年 53 巻 1 号 p. 60-62
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネラギッドスタントウイルス(RRSV)の完全粒子と,イネ黒条萎縮ウイルス(RBSDV)のB-スパイクをもつコア粒子に,RNAポリメラーゼ活性を見出した。32Pで標識した反応産物は,各々のゲノムRNAとハイブリッドを形成したがイネ萎縮ウイルスゲノムとはしなかった。S-アデノシルメチオニンの添加によってポリメラーゼ活性は,RRSVで顕著に促進された。一方RBSDVではその効果が明瞭でなく,RDVでは促進効果が認められなかった。
  • 1987 年 53 巻 1 号 p. 63-74
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 53 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 53 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 53 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 53 巻 1 号 p. 97-113
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 53 巻 1 号 p. 114-126
    発行日: 1987/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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